直近の統計によると、覚醒剤事件で勾留された場合の保釈許可率は、約15.1パーセントにとどまります。薬物事件は生活環境が整っていないために薬物に走ったと思われがちなので、保釈が認められにくい傾向があるのです。
覚醒剤事件で逮捕、いつ保釈請求できるか?
覚醒剤事件で逮捕された場合、まずは勾留されないことを目指すべきです。
保釈は、起訴された後で勾留されている場合に初めて請求できるもので、起訴される前である捜査段階では問題となりません。したがって、逮捕された段階では、保釈は問題とならないのです。
逮捕された段階では、引き続いて勾留されてしまうと身柄拘束がさらに最低10日、最大20日も続くことになります。このような不利益を避けるために、逮捕された段階では、まず勾留されないことを目指す必要があります。
覚醒剤使用事件での保釈率
裁判所の公表している『司法統計』平成24年度版によると、直近1年間に覚せい剤取締法違反で勾留された被告人は1万503人であるのに対し、そのうち保釈が許可された被告人は1583人です。つまり、覚醒剤事件で勾留された被告人の保釈許可率は約15.1パーセントに過ぎないのです。
ただ、この割合は、覚醒剤の使用・所持・営利目的所持などすべての覚醒剤事犯を合計したもので、類型ごとの打ち明けは明らかではありません。個別の類型に限ってみると、保釈許可率には偏りがある可能性があります。
大麻・麻薬事件での保釈率
参考までに、同じく『司法統計』平成24年度版より、大麻・麻薬事件の保釈率を見てみましょう。
まず、大麻取締法違反事件では、勾留された被告人770人のうち、保釈された被告人は378人です。つまり、保釈許可率は約49.1パーセントに上ります。このように保釈許可率が覚醒剤事件と比べて高いのは、大麻取締法の方が覚せい剤取締法よりも法定刑が軽く、その分だけ執行猶予も認められやすいからではないかと考えられます。
次に、麻薬及び向精神薬取締法違反事件では、勾留された被告人139人のうち、保釈された被告人は47人です。つまり、保釈許可率は約33.8パーセントです。また、麻薬特例法違反事件では、勾留された被告人68人のうち、保釈された被告人は9人です。つまり、保釈許可率は約13.2パーセントにとどまります。
覚醒剤再犯事件での保釈
覚醒剤の再犯事件で保釈が認められることは、基本的に困難であることが多いです。
再犯をした時期によって分けてみてみます。
第1に、執行猶予期間中に再犯をした場合はどうでしょうか。
この場合、判決として、再度の執行猶予を得ることはかなり困難で、基本的に実刑が見込まれます。しかも、薬物事犯は、生活環境が整っていないから薬物を使ったと思われやすいところがあり、生活が安定していないと考えられがちです。これらの点から、逃亡のおそれが高いと考えられてしまい、保釈は非常に認められにくいでしょう。
第2に、執行猶予期間経過後に再犯をした場合はどうでしょうか。
まず、猶予期間経過後数年以内の再犯であるときは、行動が改まっていないと考えられ、やはり基本的に実刑を軸に検討されます。そのため、逃亡のおそれが高いと考えられてしまい、保釈は認められにくいでしょう。
次に、猶予期間経過後長期間たってからの再犯であるときは、行動が一度は改まったという余地はあるものの、再度薬物犯罪を行なってしまった理由が問われます。そこで、再度薬物犯罪を行なってしまった原因と、その原因を克服すべく取り組んでいることを主張し、裏づけとなる証拠を提出することで、執行猶予の可能性を高めたいところです。